
今週、いままで沈黙を守っていたフクヒロペアが初めて口を開いたということで、メディアの注目が集まっている。
あまりいいニュースではないので、バドミントンファンの自分としては、あまり良い気はしないのだが、そのフクヒロペアのコメントについて、彼女たちの気持ちではなく、彼女たちが発した言葉に注目が集まってしまっている。
それは、今井監督のことを『彰浩さん』と言っていることについてだ。
本来の問題とはまた全然違うところで彼女たちがやり玉にあがってしまっている。
今回福田・廣田ペアが再春館製薬からトリッキーパンダースに移籍した理由は、『もっと成長して次のチャンレジをするため。』と答えている。
具体的には『はっきり言うと、彰浩さんと東京オリンピックを目指すため。一歩上に行くには彰浩さんのサポート必要なんです。』
今井彰浩さんは福田・廣田ペアが元所属していた再春館製薬のバドミントン監督だった。

しかし金銭的不正行為があったということで2017年1月に監督を解任された。
しかしそのあともスタッフとして残り、福田・廣田ペアの指導にあたっていた。
今井氏は今年(2018年)1月に正式に退社し、その後トリッキーパンダーズに移籍した。
すると、それを追うように、福田・廣田ペアも4月に退職し、5月1日からトリッキーパンダースに移籍した。
彼女たちは、マスコミや世間が疑っていた、"もしかしたら今井彰浩氏がフクヒロペアを引き抜いたのでは?”ということについてこう言っている。
『三月はじめ。私たちは彰浩さんに会って
自分たちを引き受けてくれるよう頼みました。
引き抜きではなくて押しかけです。』
彼女たち自身の口からこのような言葉が語られたのだ。自分たちが今井氏を追って行ったのだ。
これは並々ならない決意の現れだ。
『私たちは社会人になって日本代表に入るまでの五年間彰浩さんとともに歩んできました。
彰浩さんには一生懸命育ててもらいました。東京オリンピックははじめははるか彼方でしたが、彰浩さんが励まし続けてくれました。』
福島・廣田ペアは、いままでは高橋・松友選手の陰に隠れてまったく注目されていなかったが、その間にメキメキと実力をつけてきた。
自分も彼女たちのプレーを何度も観たことがあるし、動画でも昔の試合なども時々見たりしている。
フクヒロペアと高松ペアが何度も試合でぶつかっている。昔はフクヒロペアが高松ペアに勝つことはなかったが、どの試合も僅差で、あと一歩及ばない、という感じだった。
その時はすでに高松ペアは世界ナンバーワンだったから、その世界ランク一位のぺアに対して、ここまで迫るとは、このペアはすごい、と数年前から思っていた。
そして昨年からその実力が花開き、昨年の全日本で優勝し、今年はアジア選手権で初優勝。そして世界ランクは高松ペアを上まわる3位となっている。(2018年5月12日現在)
『私たちはこの道しかない。後悔したくない、そう思って前に進みました。』
彼女たちは東京オリンピックでの金メダルを目指している。それがはっきりとわかる言葉だった。
しかし、その本意や内容が広く知られると同時に、彼女たちの想いがストレートに伝わる前に、とんでもない部分をマスメディアは誇張して報道する。
それは、二人が今井彰浩氏のことを、彰浩さんと二人が呼んだことについてだ。
ファーストネームで呼ぶことに、『常識がない。』と避難されてしまうのだ。
自分も、彼女たちの発した言葉の中の、彰浩さん、というのはかなりひっかかりがあった。
それほど信頼関係が高いのか、とも思わせるのだが、一方で公式な発言としてなら、そこは今井さん、あるいは5月から正式にトリッキーパンダースの監督になったわけだから、『今井監督』と言うべきだろう。
でもそれだけが独り歩きしていしまい、今井監督について今問題になっている金銭トラブルについて今井氏側の言い分や、真相追求や、解決に向けての良い方向でのニュースは何も報道されていないのが残念。
どちらにしても、すでにフクヒロペアは新しい地でのスタートを切った。
少し不安なのは、トリッキーパンダースはどこの企業にも所属していない独立した団体だ。
だから資金繰りが相当大変だと思う。現に他の選手たちは資金を集めるために自分たちでコーチをしたり教室を開催したり。
それでは練習時間も減ってしまうのは必須だ。
その意味で、再春館製薬のバドミントン部での練習は天国だったろう。資金繰りのことなど何も考えることなく練習に没頭できたのだから。
トリッキーパンダ―スの現時点でのスポンサー企業は電子タバコの会社で、来年(2019年)からトリッキーパンダースの名前も変わることが決まっている。
2019年から、American Vapeという名前に変わってしまう。だから来年からはアメリカンべ―ブの福島・廣田ペア、というふうになるのだろうか。
今回の移籍問題が大々的にニュースになったことで、どこか奇特な企業や団体が福島・廣田ペアの支援をしてくれることを自分は密かに期待している。
自分は高松ペアの大ファンだから彼女たちにもぜひ勝ってほしいけれど、いっぽうで福島・廣田ペアにも勝ってほしい。
両ペアとも愛すべき存在だ。
今回のことで、福島・廣田ペアをマスコミが彼女たちについて必要以上に騒いだり傷つけることなく、練習に没頭してもらうことを祈るしかない。
そして最後にもうひとつ。
この文章がバドミントン選手が所属するすべての企業や団体に届けばいいと思うのだが、世界で戦っているバドミントン選手には、必ずメディア対応のトレーニングを受けさせるべきだ。
どんなPR会社でも(優秀なPR会社であればあるほど)、必ずメディアトレーニングプログラムを持っている。
一般企業、特に欧米企業では、幹部で外部との接触が多い人物には必ずメディアトレーニングを受講させる。これは常識。
スポーツの世界では、それがほとんど実施されていないのでは?と思うことがとても多い。
オリンピックで金メダルを取る選手でさえ、メディアに対する受け答えがヘタな人が多いのだ。
フクヒロペアも、もしメディア対応トレーニングを受けていたら、少なくても、公のインタビューで、今井監督のことを、彰浩さん、と呼ぶことは決してなかっただろう。
それだけにとても残念でならない。
バドミントン選手で、世界ランクトップ10に入った選手は絶対にきちんとしたメディアトレーニングを受けさせるべきだ。

それは選手本人ではなく、そこに所属している団体、企業あるいは協会の責任だ。
日本はこういったところにお金をかける習慣がない。でも、日本のバドミントンはいまやメジャースポーツになりつつある。たくさんの選手が世界で活躍しはじめたからだ。
ぜひバドミントン協会関連、各バドミントン部を持っている企業、団体はメディアトレーニングの重要性を知ってほしい。
すでにメディアトレーニングにはしっかりお金をかけてやっている、そんなの常識中の常識、というのなら、今回のフクヒロペアの受け答えには納得できない。
もしお金をかけてきちんとメディアトレーニングをやっているなら、あのような受け答えはありえないからである。
つまり機能していないわけだから、見直ししたほうがいい。
たとえば1年に一度やっただけで、メディアトレーニングはやっている、というのならそれは違う。
たった一度やっただけですぐに身につくものではない。四半期に一度ぐらいの割合でやってほしい。
また、通り一遍のセミナー受講だけでは絶対身につかない。
お金をかけるなら、one on one つまり1対1でのメディアトレーニングが必須だ。
人によって癖は全員違うし、よく使う言葉も違う。
たとえばバドミントン選手全員を一同に集めてそこでPR会社がセミナーを行い、ロールプレーイングをちょっと行う、これだけでは絶対にダメ。
必ず1対1のメディアトレーニングが必須だ。
自分がこのようにバドミントン選手に対して必要以上にメディアトレーニング、と叫ぶのは、自分が外資と日本企業のPR担当の仕事をかつてしていたからだ。だから日本企業のPRに対する考えと外資のそれの違いもよくわかる。
PRに対する考え方は、欧米と日本では圧倒的に違う。
日本は遅れ過ぎている!!!
今日は長いブログになってしまった。最後まで読んでくれた方、感謝!
京都桂川アリーナでバドの練習をしている石山智男です。つまり、トリッキーパンダースの一員です。わたしは再春館を退社して岐阜トリパンにきてくれた(と言うより、トリパンが受け入れた)彼女たち(フクヒロ)を応援しています。そこまで、とことんバドに人生をかけている覚悟に魅了されてなりません。
石山さん、コメントありがとうございます。自分もフクヒロを応援しています。いろいろな雑音が聞こえてきますが、彼女たちは彼女たちの結論を出し、目標に向けてひたすら努力しているひたむきさに感動すら覚えています。
最近では世界ランク一位に昇りつめ、ますます活躍している様子に、自分も勇気をたくさんもらっています。これからも応援しています。コメントありがとう。